インテグリティ
私の職業である公認会計士や税理士は、常に知見のアップデートが求められるため、継続的なインプットが欠かせません。
公認会計士、税理士それぞれに研修制度があり、毎年、年間で一定以上の単位を取得する義務があり、私ももちろん毎年取得しているのですが、それだけでは不十分であると考え、個人的にも様々なインプットに努めています。
2023年秋から2024年の年末にかけては、たまたま御縁があり、私の出身大学のOBの先生が主宰するビジネススクールで、幅広く体系的にMBAプログラムのエッセンスであるグローバル・スタンダードの経営実践体系理論を学ぶ機会を得ました。
業務を続けながらの長期にわたる学びはなかなかのハードワークでしたが、得難いものを得られ、非常に収穫の多い機会となりました。
学んだことはすべてクライアントの皆様に、引いては社会に還元したいと考えています。
学んだことは数多くありますが、本質的に大切なこととあらためて認識したのは、自身の認識の変化です。
特に、体系的に何かを学ぶと、従来は別個の概念や知識として認識していたものがつながる瞬間がしばしばあります。
「発想とは、今まですでにあったのに、繋がったことがないもの同士を繋ぐこと。」とはグラフィックデザイナーの佐藤卓さんの言葉ですが、体系的に何かを学ぶことの本質的な意義は、知識を増やすことではなく、こうした自身の認識の変化を通じてより豊かな発想を生み出す土壌を作る点ことにあるのかもしれません。
そして、大切な概念も多く学びましたが、その中でも最も重要だと感じた概念に「インテグリティ」があります。
インテグリティを一言で表す日本語はありませんが、「清廉、誠実、自己規律、謙虚、原理・原則」などを包含する概念のようです。
ピーター・ドラッカーは、「インテグリティこそが組織のリーダーやマネジメントにとって決定的に重要な資質である」として重視していたようで、「真摯さ(インテグリティの和訳)に欠けるものは、いかに知識があり、才気があり、仕事ができようとも、組織を腐敗させる」など、インテグリティに関する言葉を多く残しています(「ドラッカー名著集2 現代の経営[上][下]」(P.F.ドラッカー))。ドラッカーは、インテグリティを伴わない知識や才能は組織にとってマイナスでさえあると強調しています。
ウォーレン・バフェットにも「人を雇うときは3つの資質を求めるべきだ。すなわち、高潔さ(インテグリティの和訳)、知性、活力である。高潔さに欠ける人を雇うと、他の二つの資質が組織に大損害をもたらす。」(「一流の人に学ぶ自分の磨き方」(スティーブ・シーボルド))という言葉があるそうですが、ウォーレン・バフェットもまた、インテグリティを伴わない知性や活力は危険でさえあると強調しています。
インテグリティの定義はドラッカー本人も難しいと語っていたようですが、「インテグリティが欠如している人物の例を以下のように挙げています。
・人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者
・冷笑家
・「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心をもつ者
・人格より頭脳を重視する者
・有能な部下を恐れる者
・自らの仕事に高い基準を定めない者
これらの例を見ると、インテグリティの対極にいる人物像は「人よりも自分を優先する」「バレなければ多少の不正はしてもいい」といったイメージが浮かびます。
私の限られた経験に照らしても、インテグリティの重要性はとても腑に落ちます。インテグリティのある人とない人、人はどちらの人を選ぶのか。ビジネスにおいてもプライベートにおいても、それは明白だからです。
インテグリティを大切に、専門家として以前に人として、より良き人間になりたいと、あらためて感じた日々でした。
本年も、クライアントの皆様の様々なご依頼に誠心誠意お応えしようと、私なりに励んだ一年であり、新たな挑戦も行うことができました。ありがとうございました。
しかしまだまだ十分ではありません。クライアントが何を求めているか、真摯に謙虚に耳をすませ、十分に理解する努力を来年も継続していきます。
皆様にとって、2025年が良い一年になりますように。