事業再構築補助金に関連して思うこと

新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が困難な中で、変化に対応するために新分野展開、事業・業種転換などの事業再構築に意欲のある中小企業等の挑戦を支援する「事業再構築補助金」という制度が、国の2020年度の補正予算で創設され、2021年度に5回程度の公募が予定されています。

この補助金にはいくつかの異なる枠があるのですが、補助金額が最大1億円と、その金額の大きさなどから注目を浴びています。

その第1回公募は、応募件数22,231件、採択件数8,016件で、採択率は36%となり、弊所がサポートさせていただいた案件は無事採択されました。

その過程で、印象に残ったことを少し書き記したいと思います。

第1回の公募期間から弊所にも多くのお問い合わせをいただきましたが、中には「少し考える順番が違うのではないかな」と思ってしまうこともありました。

お問い合わせいただく皆様にはそれぞれのご事情がおありで、お気持ちは痛いほどよく理解できます。

他方、この補助金はそう甘いものではなく、採択率は低くなるのではないか。私は当初からそう考えていました(第1回公募の結果を見て、実際その通りになったと感じました)。

当たり前のことですが、そもそも事業再構築は、補助金がもらえるから行うのではなく、事業者がこの困難な状況下で社会変化に対応し、持続可能性を高めることが目的です。要するに、「その事業できちんと利益を確保し続けることができるのか」をリアルに、シビアに見極めることが何よりもまず大切になります。

であれば、まずは補助金をいったん度外視して、「きちんと利益を確保し続けるにはどうすればいいのか」「想定する売上などの数字の根拠に合理性はあるのか」などをリアルに、シビアに見極めた「実際に現場で使える」(=補助金申請のためではない)事業計画を作成することが何よりも先決です。

この作業には往々にして困難が伴いますが、だからこそ重要とも言えます。

そのうえで、「この事業は十分に利益が見込める」と一定の確信が得られ、かつ、その事業を開始するにあたって初期投資の資金が不足していれば、補助金を申請する、というのが本来の考える順番ではないかと私は考えます。

経営はギャンブルではありません。しかし、傍から見ればギャンブルのように進めようとされておられる方も実際いらっしゃいます。

経営はある意味、論理的で確率論的なゲームであるとも言うことができます。先のことはもちろん誰にもわかりませんが、確率を高める努力は前もって行うことができます。

周りの状況を確認しないまま、ビルの10階から飛び降りようとするのは「挑戦」ではなく「無謀」です。

しかし、「いざという時の命綱を身につけているか」「ビルの下にはマットが設置されているか」などの状況を事前に確認していれば、それは「無謀」ではなく「挑戦」です。

無謀な試みを挑戦に変え、挑戦の成功確率を高めていく。

そのためのサポートなら、弊所は喜んでお手伝いします。

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